月の影 影の海(6)
第六章
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〈あらすじ〉
一人で、逃げつつ働きつつ楽俊を探す陽子。雁国でようやく再会し、二人での旅が始まる。雁国の豊かさと自由さは陽子に希望を与えるが、壁落人という海客の話から、陽子がただならぬ事態に巻き込まれていることが明らかになってくる。
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第六章序盤は、それほど気になる描写はない。
強いて言うなら、
"「お前たち、持っておあげ。軽いからね」"
これ。そんなに軽いのか、と驚いた。幼い子供の手でも軽く感じるなら、水禺刀はとんでもなく軽い武器だ。
"「船から降りてきたとき、すぐに分かった。なんだか目が素通りできねえんだもん」"
陽子の美女設定は、結構さりげなく描かれる。
陽子が壁落人という海客と会って、話す場面。
"「誰かが虎を手懐けて利用することはできるんじゃないでしょうか」
「妖魔に対してそんなことができるはずがない」"
壁落人は学校で教鞭をとる知識人だけれども、麒麟が使令に同胞を集めさせて使役することができるという事実を知らないようだ。各国の法律に精通する楽俊も同様。天上のことというのは、王と麒麟の物語を読んでいると身近に感じるが、市井にとってかなり遠い出来事なのかもしれない。