十二国記について語りたい!

十二国記のネタバレ感想・展開予想・愛を叫びます

月の影 影の海(7)

第七章

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〈あらすじ〉

ケイキが「タイホ」と呼ばれていたことから、陽子が景国の新王であることが明らかになった。延王の力を借りて窮地を切り抜け、慶の状況を把握する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

陽子が慶国の新しい王であることがわかり、物語にとって重要な一言が楽俊の口から発される。

"「王というのは玉座に就くまでは単なる人だ。王は家系で決まらない。極端を言えば、本人の性格とも外見とも関係がない。ただ、麒麟が選ぶかどうか、それだけなんだ」"

そうらしい。しかし、おそらくそう単純な話ではない。王の卵が王になるまでに期間があるようだし、一体景麒が陽子のどこに王たる資質を見出したのかは不明だ。性格には景麒でなくて、天が見出すのだけど。

 

延王尚隆との出会いによって、水禺刀がどういうものかも明らかになる。

"「…水をして剣を成さしめ、禺をして鞘をなさしめ、よって水禺刀というそうだ。剣としても傑物だが、それ以外の力も持っている。刃に燐光を生じ、水鏡を覗くようにして幻を見せるそうだ。うまく操る術を覚えれば過去未来、千里の彼方のことでも映し出すという。気を抜けば、のべつまくなし幻を見せる。それで鞘をもって封じるとか」"

"「鞘は変じて禺を現す。禺は人の心の裏を読むが、これもまた気を抜けば主人の心を読んで惑わす。ゆえに剣をもって封じると聞いた。慶国秘蔵の宝重だ」"

"「…水禺刀は慶国の宝重、そもそも、魔力甚大な妖魔を滅ぼす代わりに封じ、剣と鞘に変えて支配下に押さえ込み、宝重となしたものだ。ゆえにそれは正当な所有者にしか使えん。すなわち、景王でなくてはな。封じ込んだのが何代か前の景王だから、そういうことになる」"

 

天についての記述も。

"「…だとしたら、そのうち景王暗殺を命じた王は明らかになるだろうよ。天が見過ごすはずがないからな」"

"「…国が傾くゆえ、誰が命じたのか分かる」"

ここで気になるのが、時差。覿面の罪は即断罪だけれども、景王暗殺というほどのことをしておいて、それは覿面の罪とは認められない。このシステマチックな世界。

「言葉」によって構築されたルールと、ゆえに存在する抜け穴は、十二国記全編を通して問題になっている。

 『黄昏の岸 暁の天』の、泰麒を連れ戻す件について玉葉に相談しに行く場面でそれが顕著になるわけだけど。陽子のために慶に王師を派遣することについても、実は玉葉に相談済みである。そういう世界のシステムをよく理解した尚隆だからこそ出てくる、次のセリフ。

"ここには天意というものがある。天帝がいずこにかおわし、地を造り国を造り世の理を定めたという"

その上、天意というものは極めてシステマチックである、とそういうわけだ。「月の影」と「黄昏」は関連して考えるべき箇所が結構多いかも。

 

いよいよクライマックス。上巻は辛酸をなめつくした陽子だけれども、楽俊に出会って、延王も登場して、もう怖いものなしだね!